2026-06-03 17:44:46 日本ビジネス法講座

SERIES 2-04: 日本における「取締役」に関するルール

会社を設立し事業を運営していくうえで、経営の根幹を担うのが「取締役」などの役員です。しかし、「社長」や「CEO」といった一般的な肩書と会社法上の「取締役」の違いや、役員が負う法的責任、あるいは任期満了に伴う登記懈怠のリスクについて、実務上把握されていないケースが散見されます。本記事では、役員に関する日本の会社法上のルールや実務的なポイントについて解説します。

 

1.取締役とは何か

日本の会社法における「取締役」とは、株式会社の業務執行の意思決定等を行う法定の機関(役員)です(会社法326条等)。会社との関係は「委任契約」となります。これに対し、「社長」「CEO(最高経営責任者)」「会長」といった名称は、会社法上の明確な定義を持たない「社内の呼称」にすぎません。

区分

会社法上の位置づけ

役割・特徴

取締役

法定の役員(必須)

会社の業務執行の意思決定を行う。

代表取締役

法定の役員(取締役から選定)

会社を代表して業務を執行する権限を持つ。

社長・CEO等

法的な定義なし

最高責任者や名誉職を示す一般的な肩書。

執行役員

会社法上の役員ではない

取締役会等が決定した方針に従い、実務を実行する者。

 

2.取締役の役割と法的責任

(1) 善管注意義務と忠実義務の実務的な意味

取締役は、会社に対して「善良な管理者の注意」をもって職務を行う義務を負います(会社法330条、民法644条)。また、会社のために忠実に職務を遂行しなければなりません(会社法355条)。

(2) 役員報酬の決め方

役員報酬は、自身の報酬を不当に高く設定することを防ぐため、定款に定めがない場合は「株主総会の決議」によって総額を定めます(会社法361条)。実務上は、株主総会で報酬総額のみを決定し、具体的な配分額は取締役会(または代表取締役への一任)で決めるのが一般的です。

 

3.任期と「登記懈怠」のリスク

 原則として、取締役の任期は2年、監査役は4年とされています(会社法332条、336条)。ただし、すべての株式に譲渡制限を設けている「非公開会社」であれば、定款で定めることにより、任期を最長10年まで伸長することが可能です。任期満了後も役員を続ける場合(重任)、必ず2週間以内に「重任の登記」を申請しなければなりません(会社法915条1項)。これを放置すると「登記懈怠」となり、裁判所から100万円以下の「過料(行政上の罰則)」が科される可能性があります(会社法976条1項)。実務上、懈怠期間が数年に及ぶと数万円〜十数万円程度の過料が科されることもあります。

 

4.代表取締役の権限と複数選任

(1) 代表取締役と平取締役の違い

代表取締役は、会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有します(会社法349条4項)。一方、代表権を持たない「平取締役」が自ら会社を代表して契約を結ぶ権限はありません。日本の会社と取引を行う際、相手の名刺に「CEO」や「社長」と記載されていても、法的に代表権を持っているとは限りません。

(2) 複数の代表取締役がいる場合

会社は代表取締役を複数名選任することも可能です。この場合、各代表取締役はそれぞれ単独で会社を代表する権限を持ちます(会社法349条)。業務分担の観点から複数の代表者を置くケースがありますが、各自が単独で契約を締結できるため、社内で相反する契約を結んでしまうリスクがある点に注意が必要です。

 

5.外国人取締役を置くときのポイント

外国人が取締役や代表取締役になることは問題ありません。もっとも、代表取締役の全員が海外在住である場合、日本の金融機関で「法人口座を開設する」際の実務上は大きな問題となります。

 

6.ま

日本の会社法における取締役・役員制度では、厳格な責任と手続(株主総会決議や適時の登記など)が求められます。また、「CEO」等の肩書に惑わされず登記を確認する姿勢や、外国人役員を起用する際の口座開設の問題など、法務上のルールとビジネス上の実態の両面を意識した法人運営を心がける必要があります。

 

 


おわ

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