SERIES 1-02: 日本における会社設立までの流れとスケジュールについて

1.会社設立の基本構成

日本で会社を設立するには、まず、会社の骨組みを決めなければなりません。以下の要素は、後の登記や運営に大きく関わります。

 

資本金額:会社法上は1円から設立可能ですが、当該会社の外国人経営者が「経営・管理」の在留資格を取得する場合は3000万円以上の出資、または2名以上のフルタイム職員の雇用が実質的な要件となります。(2025年10月に経営管理ビザの取得要件が厳格化されました。)

機関設計:取締役1名のみの最小構成も可能です。また会社がある程度規模が大きくなる場合には次の機関を設けることもあります。

取締役会:3名以上の取締役が必要です。取引先からの信用度を高めたい場合に検討します。

監査役:取締役会を設置する場合、原則として設置義務がありますが、非公開会社(株式譲渡制限会社)であれば設置しない選択も可能です。

 

2.商号(会社名)と目的の決定

商号のルール:アルファベットも使用可能ですが、有名企業と誤認される名前や、公序良俗に反する名前は登記できません。また、同一住所に同一商号の会社がある場合は登記不可(実務上は稀ですが、バーチャルオフィス等では注意が必要)です。

目的の決め方:「何をする会社か」を明確にします。将来行う可能性のある事業も含めて多めに記載するのが一般的ですが、許認可が必要な事業(中古品売買、旅行業、飲食等)を行う場合、その目的に特定の文言が入っていないと許可が下りないため、事前の確認が必須です。

 

3.外国人役員・外国企業が株主となる場合の必要書類

日本に住民票がない外国人や海外法人が設立に関わる場合、日本の「印鑑証明書」を取得できません。その代わりとして、本国で発行された「サイン証明書(署名証明書)」が必要となります。

ここで実務上、最も注意すべきなのが認証の範囲(アポスティーユや日本大使館の領事認証の要否)です。

 

提出先

要求される認証のレベル(実務上の目安)

法務局(登記)

原則として、本国の公証人や本国官憲の認証があれば受理されます。アポスティーユや日本大使館の領事認証まで求められることは稀です。

銀行(口座開設)

非常に厳格です。公証人の認証に加え、アポスティーユ(ハーグ条約加盟国)または日本大使館の領事認証(非加盟国)を必須とする銀行が大半です。

 

法務局が「不要」と言っていても、その後の銀行口座開設で必ずと言っていいほど「アポスティーユ」を求められます。二度手間を防ぐため、最初からアポスティーユ付のサイン証明書を取得するのが鉄則です。

 

4.資本金の払い込みとスケジュールの注意点

会社設立の手続きは、書類が揃ってから登記完了まで通常約2週間〜1ヶ月程度を要します。

 

資本金の送金タイミング:登記申請前に行う必要があります。まだ「会社名義」の口座は存在しないため、発起人または代表者の「個人の日本の銀行口座」に振り込みます。

海外からの送金:外国から直接送金する場合、着金までに数日〜1週間かかることがあります。また、銀行から資金源泉の確認が入ることもあるため、余裕を持ったスケジュール管理が必要です。

 

5.法人口座の開設

登記が終われば完了ではありません。現在、日本の銀行での法人口座開設は非常に厳格です。

 

日本語担当者の必須性:多くの銀行では、代表者が外国人であっても、「日本国内に居住し、日本語で銀行と意思疎通ができる担当者」がいることを強く求められます。これがないと、審査の土俵にすら乗れないケースがあります。

実態の証明:バーチャルオフィスの場合、審査が非常に厳しくなります。オフィスの賃貸借契約書や、事業計画書、ウェブサイトなどの準備が不可欠です。

 

6.外為法に基づく「事後報告・事前届出」

外国投資家が日本の会社を設立(株式を取得)する場合、外為法(外国為替及び外国貿易法)に基づき、日本銀行を経由して財務大臣等へ報告する必要があります。

 

事前届出:武器製造、エネルギー、ソフトウェア(一部)など、「国家安全保障に関わる業種」に該当する場合は、会社を作る前に届出を行い、審査を待つ(原則30日)必要があります。これを知らずに設立すると法規制違反となるため、事前の業種チェックは必須です。

事後届出:多くの業種では、設立後45日以内に報告すれば足ります。

 

 


おわりに

日本ビジネス法講座では、今後も日本におけるビジネス進出・展開に役立つ情報を配信してまいります。

また、具体的な案件のご相談につきましては、弊事務所の相談メールまでお気軽にご連絡いただけますと幸いです。

 AZ MORE国際法律事務所

SERIES 1-01:日本における会社・法人形態とその特徴

 

1. はじめに:日本進出時に選択する法人形

日本で事業を開始するにあたり、まず検討すべきポイントが「どの法人形態を選ぶか」です。それぞれ法的責任、出資者の権利義務、信頼性、運営コストなどが異なります。

 

区分

形態

責任範囲

登記

主な特徴

法人形態

株式会社(KK)

有限責任

必要

最も一般的。ガバナンス・信用性が高い。

合同会社(GK)

有限責任

必要

米国LLCに類似。柔軟な組織設計。

小規模事業にも適合。

集団投資スキーム

 

匿名組合(TK)

有限責任

不要

営業者(事業運営担当)と各投資家が1:1でその事業からの利益を受け取ることを目的とする契約を締結。

任意組合

無限責任

不要

全投資家が組合員として、相互に組合契約を締結する。

投資事業有限責任組合(LPS)

無限責任組合員:GP

有限責任組合員:LP

必要

一部の組合員の責任を有限責任とする特別の組合。専らベンチャーキャピタルやPEファンド組成時に利用される。

有限責任事業組合(LLP)

全組合員が有限責任

必要

組合員全員が共同して事業をすることが想定されており、重要事項の決定には全組合員の同意が必要となる。

 

実務上、税制上のメリットを受けるために組合を利用した集団投資スキームを採用している例も多いですが、集団投資スキームにおいては、その出資者を募る場合、金融商品取引法上の登録(第2種金融商品取引業)が必要になるなど検討事項が多く、実際には、外国企業が日本で事業展開する際に検討するのは株式会社(KK)か合同会社(GK) の2つが最も一般的です。以下では、株式会社(KK) と合同会社(GK) の違いにフォーカスし、実務的観点から整理します。

 

2. 株式会社と合同会社の基本構造の違い

株式会社は「所有と経営の分離」を特徴とし、株主は原則として経営に直接関与しません。経営は取締役が担い、株主は会社の重要事項に投票する立場です。この仕組みにより、外部投資家の参入やガバナンス体制の構築が容易となります。一方、合同会社は「所有=経営」が基本で、原則としてすべての出資者(社員)が経営に携わる権限を持ちます。これは米国のLLCに近い構造であり、柔軟性が高い反面、複数出資者がいる場合は意思決定に時間を要したり、内部関係が複雑になる場合があります。

 

項目

株式会社(KK)

合同会社(GK)

概念

株式を発行して資金を集める株式会社

米国の LLC や LP に近い概念

所有

株主が株式を所有

社員が持分を所有

責任

株主は出資額を限度とした有限責任

社員は出資額を限度とした有限責任

経営

取締役会または取締役(会社規模により異なる)が経営を担当し、所有と経営の分離が可能

原則として社員が直接経営に関与(「業務執行社員」を定めることも可能)

資本金

最低資本金の規制なし

(※かつては1,000万円だったが廃止)

最低資本金の規制なし

意思決定

株主総会、取締役会など法定の決議機関・手続きが必要

定款により内部ルールを自由に設定可能

 

3. どちらを選ぶべきか:実務的視点からの比較

合同会社(GK)は、設立費用が安く、定款の自由度も高く、日々の運営が簡便であるため、小規模事業や個人事業主から法人化する場合に適しています。また、海外企業による日本子会社での採用例も見られます。

しかし、複数の出資者が関与するビジネスでは、株式会社(KK)が推奨されます。その理由は、ガバナンス体制を明確に構築できる点、出資比率に応じた意思決定や議決構造が整備されている点、外部投資家や金融機関からの信用が高い点などが挙げられます。将来的に資金調達を行う可能性がある事業では、株式会社の方が有利と言えます。

明確な理由がない限り、株式会社(KK)を選択する方が、ガバナンス面・資金調達面・信用面でメリットがあります。

 

 


おわりに

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