日本ビジネス法講座 SERIES 3-01「『日本のチームは解散します』―突然の呼び出しで退職合意書への署名を求められたら」リリースしました。
SERIES 3-01: 「日本のチームは解散します」―突然の呼び出しで退職合意書への署名を求められたら
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【事例】 外国人労働者Xさんは、B国に本社を置くグローバル企業の日本法人Y社で、営業マネージャーとして8年間働いています(在留資格は就労ビザ)。ある朝「15分だけ」の会議に呼ばれ、人事担当者と本社の上司(オンライン)から「組織再編で日本のチームは解散する。あなたのポジションはなくなる」と告げられました。英文の退職合意書を渡され、「今週金曜までに署名すれば月給3か月分を支払う。署名しなければこの条件はなくなる」と説明されました。その日のうちにパソコンと社員証を返却し、システムへのアクセスも止められました。 |
外資系によくある場面ですが、日本の労働法は本社の所在地に関係なく適用されます。
【先に結論:押さえておきたい4つのポイント】
①これは解雇ではなく退職のお願い(退職勧奨)。署名は自由です。
②「チームがなくなる」だけでは、解雇は簡単に認められません。
③「3か月分」は最終条件とは限らず、交渉できます。
④就労ビザの人は、署名前に退職日とビザの関係を確認しましょう。
Q1. その場で、または期限までに署名しなければいけませんか?
A1. いいえ。合意書は会社と社員の「合意」なので、署名しなければ雇用はそのまま続きます。「持ち帰って確認します」と伝えれば十分です。ただし、期限を過ぎると条件が撤回されることもあるため、期限内に専門家に相談しましょう。執拗な呼び出しや脅しは違法となり得るので、面談内容は記録しておきましょう。一度署名すると、取り消すのはほぼ不可能ですので、内容に真に合意できない場合は署名はしないでください。
Q2. ポジションがなくなれば、会社は解雇できるのではないですか?
A2. 日本では、それだけでは足りません。経営上の理由による解雇(整理解雇)では、①人員削減の必要性、②解雇を避ける努力(他部署への異動などの検討)、③対象者の選び方の合理性、④十分な説明・協議、が問われます。日本法人に他の部署があれば、特に②が問題になります。雇用契約書に「B国法に従う」とあっても、日本で働く社員は日本の解雇ルールの適用を主張できます。解雇のハードルが高いからこそ、会社は「パッケージ付きの退職合意」を求めるのです。
Q3. 3か月分は妥当ですか?合意書のどこに注意すべきですか?
A3. 金額に法律上の決まりはなく、上乗せされることがとても多いです(特に労働者に何の落ち度もなければ6ヶ月から1年分の給与相当額の退職金の支払いの合意がされることも多いです)。金額のほか、退職日(在籍したまま就業を免除してもらう「ガーデンリーブ」)、有給休暇の消化・買い取り、賞与の扱い、離職理由を「会社都合」とすること(失業手当で有利)も交渉できます。
合意書では、「この合意書に定めるもの以外に、互いに一切の請求をしない」という清算条項に注意してください。未払いの残業代なども請求できなくなるおそれがあります。競業避止条項や退職理由の書き方も確認しましょう。
Q4. もし署名を断って、解雇されたら?
A4. 解雇を言い渡されても、退職届や合意書にはサインしないでください(「自分から辞めた」扱いになります)。そのうえで、①解雇理由証明書を請求する(後から理由を付け足されるのを防げます)、②30日前の予告か30日分以上の解雇予告手当があったか確認する、③証拠を集める、④弁護士から「解雇は無効で、働く意思がある」と会社に通知する、という流れが推奨されます。
争う方法には、労働審判(多くは3か月前後で終わる)、訴訟(職場復帰を正面から求めることも可能)があります。解雇が無効なら、その間の給料(バックペイ)も請求でき、これが解決金交渉での大きなレバレッジになります。
Q5. 就労ビザの場合、何に気をつければよいですか?
A5. 日本人社員との一番大きな違いです。永住者や日本人の配偶者等は、退職・解雇されても在留資格はなくなりません。一方、就労ビザの場合は、退職から14日以内に入管への届出が必要で、正当な理由なく3か月以上本来の仕事をしていないと、在留資格を取り消される可能性があります。退職日をいつにするかは、金額と同じくらい重要です。解雇を争う場合も届出は忘れず、再就職活動の記録を残しましょう。
おわりに
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