2026-02-02 15:41:13 日本ビジネス法講座
1. はじめに:日本進出時に選択する法人形態
日本で事業を開始するにあたり、まず検討すべきポイントが「どの法人形態を選ぶか」です。それぞれ法的責任、出資者の権利義務、信頼性、運営コストなどが異なります。
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区分 |
形態 |
責任範囲 |
登記 |
主な特徴 |
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法人形態 |
株式会社(KK) |
有限責任 |
必要 |
最も一般的。ガバナンス・信用性が高い。 |
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合同会社(GK) |
有限責任 |
必要 |
米国LLCに類似。柔軟な組織設計。 小規模事業にも適合。 |
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集団投資スキーム
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匿名組合(TK) |
有限責任 |
不要 |
営業者(事業運営担当)と各投資家が1:1でその事業からの利益を受け取ることを目的とする契約を締結。 |
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任意組合 |
無限責任 |
不要 |
全投資家が組合員として、相互に組合契約を締結する。 |
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投資事業有限責任組合(LPS) |
無限責任組合員:GP 有限責任組合員:LP |
必要 |
一部の組合員の責任を有限責任とする特別の組合。専らベンチャーキャピタルやPEファンド組成時に利用される。 |
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有限責任事業組合(LLP) |
全組合員が有限責任 |
必要 |
組合員全員が共同して事業をすることが想定されており、重要事項の決定には全組合員の同意が必要となる。 |
実務上、税制上のメリットを受けるために組合を利用した集団投資スキームを採用している例も多いですが、集団投資スキームにおいては、その出資者を募る場合、金融商品取引法上の登録(第2種金融商品取引業)が必要になるなど検討事項が多く、実際には、外国企業が日本で事業展開する際に検討するのは株式会社(KK)か合同会社(GK) の2つが最も一般的です。以下では、株式会社(KK) と合同会社(GK) の違いにフォーカスし、実務的観点から整理します。
2. 株式会社と合同会社の基本構造の違い
株式会社は「所有と経営の分離」を特徴とし、株主は原則として経営に直接関与しません。経営は取締役が担い、株主は会社の重要事項に投票する立場です。この仕組みにより、外部投資家の参入やガバナンス体制の構築が容易となります。一方、合同会社は「所有=経営」が基本で、原則としてすべての出資者(社員)が経営に携わる権限を持ちます。これは米国のLLCに近い構造であり、柔軟性が高い反面、複数出資者がいる場合は意思決定に時間を要したり、内部関係が複雑になる場合があります。
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項目 |
株式会社(KK) |
合同会社(GK) |
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概念 |
株式を発行して資金を集める株式会社 |
米国の LLC や LP に近い概念 |
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所有 |
株主が株式を所有 |
社員が持分を所有 |
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責任 |
株主は出資額を限度とした有限責任 |
社員は出資額を限度とした有限責任 |
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経営 |
取締役会または取締役(会社規模により異なる)が経営を担当し、所有と経営の分離が可能 |
原則として社員が直接経営に関与(「業務執行社員」を定めることも可能) |
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資本金 |
最低資本金の規制なし (※かつては1,000万円だったが廃止) |
最低資本金の規制なし |
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意思決定 |
株主総会、取締役会など法定の決議機関・手続きが必要 |
定款により内部ルールを自由に設定可能 |
3. どちらを選ぶべきか:実務的視点からの比較
合同会社(GK)は、設立費用が安く、定款の自由度も高く、日々の運営が簡便であるため、小規模事業や個人事業主から法人化する場合に適しています。また、海外企業による日本子会社での採用例も見られます。
しかし、複数の出資者が関与するビジネスでは、株式会社(KK)が推奨されます。その理由は、ガバナンス体制を明確に構築できる点、出資比率に応じた意思決定や議決構造が整備されている点、外部投資家や金融機関からの信用が高い点などが挙げられます。将来的に資金調達を行う可能性がある事業では、株式会社の方が有利と言えます。
明確な理由がない限り、株式会社(KK)を選択する方が、ガバナンス面・資金調達面・信用面でメリットがあります。
おわりに
日本ビジネス法講座では、今後も日本におけるビジネス進出・展開に役立つ情報を配信してまいります。
また、具体的な案件のご相談につきましては、弊事務所の相談メールまでお気軽にご連絡いただけますと幸いです。
AZ MORE国際法律事務所